AI時代の英語資格は「会食」を試験にすればいい

こんにちは、なみすけ85です。
前回の記事では、認証される「英語力」の中身は、今とは変わっていくのではないか について書きました。
現在の英語資格では、Reading、Listening、Writing、Speakingという4技能をそれぞれ測るのが一般的です。私はこれが、将来はSpeaking、より正確に言えば「人とコミュニケーションする力」を中心とした構造に変わっていくのではないかと考えています。
では、そのコミュニケーション能力をどうやって測るのか。
前回の記事を書いたあと、改めて考えてみました。
例えば、思い切って「会食」を試験にするのはどうでしょうか。
冗談のように聞こえるかもしれませんが結構本気です。
英語の実力が一番よく分かるのは、会議より会食かもしれない
英語資格では、Reading、Listening、Writing、Speakingの4技能を測るのが一般的です。
Speakingでも、あるテーマについて自分の意見を述べたり、試験官からの質問に答えたりします。英検1級の二次試験などは、その代表でしょう。
もちろん、これには相当な英語力が必要です。
一方で、実際に海外の人と仕事をしていると、英語力が問われる場面はもっと流動的です。
会議であれば、ある程度は準備ができます。専門用語も分かっていますし、議題も事前に知らされています。プレゼンテーションなら、もっと準備できます。
ところが会食はそうはいきません。
「日本には何日いるの?」
という話から始まったと思ったら、食べ物の話になり、旅行の話になり、家族の話になり、最近見た映画の話になり、いつの間にか仕事の話に戻っている。
話題がどこへ行くのか分かりません。
つまり、アドリブです。
私は、このアドリブにこそ、その人が本当に持っている英語力が表れると思っています。
「話せる」とは、難しいことを話せることなのか
英語学習を続けていると、だんだん難しいことを英語で話せるようになります。
国際情勢について意見を述べる。
環境問題について議論する。
経済政策について賛否を説明する。
資格試験では、このようなテーマが上級者向けとして扱われることも多いでしょう。
ところが、実生活で圧倒的に多いのはもっと普通の話です。
「これ、おいしいですね」
「昨日どこに行ったんですか?」
「子どもは何歳ですか?」
「東京ではどこがおすすめですか?」
こうした一見簡単な会話を、30分、1時間と自然に続けるのは意外に難しいものです。
単語を知っているだけでは足りません。
相手の話に興味を持ち、質問を返す必要があります。驚いたり、笑ったり、共感したり、自分の似た経験を思い出して話したりもします。
そして何より、話題の引き出しが必要です。
衣食住、家族、旅行、文化、趣味、スポーツ。
難しい英単語をどれだけ知っているかとは別の能力です。
会食で沈黙するTOEIC高得点者
これは少し極端な例ですが、TOEICで非常に高い点数を持っているのに、外国人との会食になるとほとんど話さない人がいたとします。
一方で、資格試験の点数ではその人に及ばなくても、外国人と食事をすれば、相手の話を聞き、質問をし、笑わせ、気が付けば一時間ずっと話している人がいる。
仕事で海外の人との信頼関係を築くという目的から考えれば、後者の能力には相当な価値があります。
ところが、現在の英語資格では、この違いを十分に評価することは難しい。
私はここに、これからの英語資格が進化する余地があると思っています。
だったら、本当に一緒に食事をさせればいい
例えば、将来こんな英語試験があったらどうでしょう。
受験者が、初対面の外国人3人と90分間食事をする。
テーマは決めません。
何を話してもいい。
試験官から「次のテーマについて意見を述べなさい」といった指示もありません。
その90分間を通じて、
相手の発言を理解しているか。適切に質問を返しているか。自分から新しい話題を提供できるか。話題が変わったときについていけるか。自分ばかり話していないか。相手が話しやすい雰囲気をつくれているか。
そして最終的には、
この人ともう一度話したいと思えるか。
そんなところまで評価する。
これは単なるSpeaking Testではありません。
Communication Testです。
英語という道具を使って、人と関係を作れるかを見る試験です。
なぜ今まで、そんな試験がなかったのか
問題は採点です。
ある試験官は「話しやすい人だ」と評価しても、別の試験官はそう感じないかもしれません。
話題も受験者によって違います。
同じ問題を解かせる筆記試験と比べれば、公平な評価は非常に難しくなります。
資格試験である以上、これは大きな問題です。
だから、英語試験はどうしても標準化しやすい方向へ進んできたのだと思います。
また人件費等コストの問題もあります。
ところが、ここにAIが入ってくると話が変わります。
AIが「人間らしい英語」を判定する
AIであれば、大量の会話を同じ評価モデルで分析できます。
文法や語彙だけを見る必要もありません。
発話量、応答までの時間、質問の種類、話題の広がり、相手の発言との関連性、会話のキャッチボールなど、これまで人間の試験官では客観的な点数にしにくかったものまで分析できる可能性があります。
しかも面白いのは、AIが進歩することによって、試験で測れるものが逆に人間らしくなることです。
これまでは公平に採点するために、人間の複雑なコミュニケーションをReading、Listening、Writing、Speakingと分解して測ってきました。
AIによって複雑な会話そのものを安定して評価できるようになれば、もう一度それらを統合できるかもしれません。
Readingも必要です。
Writingも必要です。
Listeningも必要です。
ただ、それらが独立した4つの能力として横に並ぶのではなく、
「人とコミュニケーションする力」を中心に置き、それを支える能力になる。
私は、そんな構造に変わっていく可能性があると思っています。
だからこそ、衣食住の英語から始める
ここで、以前紹介した英語学習の話につながります。
高度な社会問題について英語で話せても、自分が昨日何を食べたのか、週末に何をしたのか、最近何に感動したのかを自然に話せなければ、実際の会話では困ります。
だからこそ、前回紹介したあの一冊から始めるのです。
まず、自分の生活を英語にする。
朝起きる。顔を洗う。朝食を食べる。会社へ行く。昼食を取る。家に帰る。
そこから少しずつ、好きな食べ物、家族、旅行、趣味、最近あった出来事へと話せる範囲を広げていく。
これは一見すると初歩的な英語学習です。
でも、AI時代に英語資格が本当にコミュニケーション能力を測る方向へ進むのであれば、実はこういう英語こそ最後まで残るのではないでしょうか。
英語資格の目的そのものが変わる
これまでの英語資格は、
「この人はどれくらい英語ができるのか」
を証明するものでした。
しかしこれからは、
「この人は英語を使って何ができるのか」
を証明するものになるのかもしれません。
海外の人と議論できる。
交渉できる。
一緒に仕事ができる。
そして、その前提として、
人と信頼関係を築くことができる。
そこまで測れる資格なら、AI翻訳が当たり前になった時代にも、十分に価値があります。
AIが英語を代わりに書いてくれる時代だからこそ、人間には、人間にしかできない英語が求められる。
そして、それを判定する試験官がAIになる。
AIに、人間らしさを採点してもらう。
なんとも不思議な話ですが、案外そんな英語試験が登場する日は遠くないのかもしれません。






